●見えてきた2030年 Beyond 5G 

Beyond 5Gとは、「高速・大容量」「低遅延」「多数同時接続」といった5Gの特徴的機能のさらなる高度化に加え、「超低消費電力」「超安全・信頼性」「自律性」「拡張性」といった新たな価値の創造に資する機能をもった5Gの次の世代の次世代の移動通信システムである。5Gは4G LTEの10倍の性能を目指しているが、Beyond 5G(B5G)はほぼ100倍を目指している。つまり速度は最大100Gbps,低遅延は0.1msec,同時接続端末は10000台となる。

なぜBeyond 5Gと称して6G(第6世代移動通信システム)としないのかというと、ある説ではまだ5Gが緒についたばかりなので5Gの実装を牽引して欲しいという願いが込められているそうである。経団連が2020年 11 月に公表いた「新成長戦略」においても、2030 年に向けて我が国が新たな成長をめざす、そのための共通基盤として、高品質なデータをやりとりするための次世代通信網を、産学官が一体となって整備することを掲げている。

また、Beyond 5Gに求められる新たな機能として下記の3つが示されている。

  • 「自律性」AI技術等を活かし、人手を介さず、あらゆる機器が自律的に連携し、有線・無線を意識せず即座に利用者のニーズに合わせて最適なネットワークを構築する
  • 「拡張性」端末や基地局が、衛星やHAPS(High Altitude Platform Station)等の異なる通信システムとシームレスに繋がり、また、端末や窓など様々なものも基地局とすることで、至る所にある機器が相互に連動しつつ、海、空、宇宙を含むあらゆる場所で通信を利用可能とする
  • 「超低消費電力」現在の1/100程度の消費電力に抑える

出典:総務省等 AZCA編集

この実現に向けての鍵となる技術開発は「テラ波」の利用である。テラ波は300GHz(ギガヘルツ)から3THz(テラヘルツ)の周波数帯域のことを指し、電波と光の中間領域にあたる。電波の透過性と光の直進性を併せ持つのが大きな特徴である。このような優れた特徴を持つテラ波はこれまで人類が使いこなせなかった。電波としては周波数が高すぎ、また光としては周波数が低すぎるためで、従来の技術ではテラ波の発生や検出が困難であった。しかしデジタル計測器の進化は著しく、2030年にむけてテラ波の実用化は現実的になってきていると考える。

現在の5Gでは利用帯域幅は100MHzから400MHzとされる。Beyond 5G/6Gのチャンネルあたりの帯域幅はさらに拡大して2GHzから69GHzと帯域幅が広いほど高速通信が可能になり、さらなる超高速通信が期待されるのだ。Beyond 5Gに向けて日本政府は4,900億の開発予算を提供すると報道されている。2025年の万博ではショーケースとしてその片鱗が見られるかもしれない。

出典AZCA

(AZCA, Inc. 奥村文隆/パートナー、東京代表)